| vol.7 |
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| 有限会社 オーツー 代表取締役 小野寺年也 |
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目に見えない温熱環境をコントロールするプランニング。 |
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■07年11月、盛岡市本宮地区に |
新築移転した事務所。 |
2階窓の横に付いているパネルは、 |
室内に太陽熱を送り込む集熱板。 |
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■ 今年で創業10年目ですが、改めて事業内容を教えてください。
小野寺/オール電化住宅の暖房設計をメインに、設備機器の卸販売や取り付け工事、メンテナンスまで行っています。扱う製品は、いずれも高断熱・高気密住宅での使用を前提にしたものが多く、オール電化対応の設備機器をはじめ、遮熱材、塗り壁材、自然素材系断熱材、環境改善舗装材など多岐に渡ります。オール電化住宅の暖房器=蓄熱式電気暖房器というイメージが定着しているようですが、他にも温水パネルヒーター、スラブヒーター、オイルパネルヒーターなどがあります。暖房器ごとに特徴があり、同じ暖房器でもメーカーによって機能や使い勝手に違いがあって、暖房効果は導入する住宅の性能、立地にも左右されます。また、熱源を電気ではなく、ヒートポンプで空気熱や地中熱に求めるタイプもあります。このように、暖房器の選択肢は少なくないので、依頼主の指定がない限りは、単一ではなく、適宜組み合わせて提案するケースが多くなります。一軒ごとに住宅の性能、平面計画、立面計画、家族数、ライフスタイル、好み、予算などを総合的に判断し、その家にとってベストと思われるプランを提案します。また、設計事務所としても登録しており、一般ユーザーから、戸建て住宅の設計から暖房設計まで依頼されることもあります。
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■事務所1階はショールームとしても機能。 |
壁の配色、素材、暖冷房器など、 |
目に見えるものから、感じる温湿度まで、 |
すべてが提案ツール。 |
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■ 一般ユーザーが御社に住宅の設計を依頼するときのメリットとは。
小野寺/「暖房設計」も加味した総合的なプランニングができるという点です。一般的な注文住宅の設計では、まずお客様が希望する条件や要望を伺った上で、総予算から材料費、施工費、設計料、設備費など、どの部分にどれだけの費用をかけるかというコストの配分から考えていくのが普通です。私たちも予算を無視するわけではありませんが、入口は全く逆。「こんな家に住みたい」という希望や要望を考慮し「このお客様にとって必要な快適性とはどんなものか、そのために必要な暖房システムは何か、そのシステムを割安なランニングコストで、最大限の暖房効果を発揮させるために必要な性能やプランはどういう形か」という順序で考えていくわけです。工務店から暖房設計のみを依頼される場合は、すでに平面・立面プランが確定しているケースが多く、さらに蓄熱式暖房器を使ってほしいなどと、暖房機器を指定されることが少なくありません。そうなると暖房器の設置場所はほとんど限定されてしまうわけです。
私たちは、平面図と立面図を見れば、おおよそ、どの場所に不快な低温の気流が発生するかの予測がつきます。図面と建物の性能がわかれば、その建物に対して必要な暖房容量は簡単に計算でき、家族構成やライフスタイルなどを伺って、机上の計算からさらに現実に近づけていくようにします。例えば、高齢者は体感温度が低めなので、高齢世帯ならば暖房容量を若干大きくみておく…という具合です。平面、立面だけではない、目に見えない温熱環境をつくりだす図面を引くことができる自負が、私たちにはあります。
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設備ありきではなく「生活環境」をデザインする視座と技術。 |
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■勉強熱心。機会があれば、 |
国内外の先進事例を見に歩き、 |
熱心に話を聞いて回る。 |
広い人脈を活かし、 |
人と人を繋ぐキーパーソンでもある。 |
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■ 温熱環境は、実際に体験してみないとわかりにくいものですが。
小野寺/気流を伴わず、空間全体をむらなく暖めることができる「輻射暖房」の暖房感や、計画的な換気システムや調湿効果の高い塗り壁材による澄んだ空気感など、目に見えない快適さは、言葉ではなかなか説明しにくいものです。体感できる場所も多くありません。そうした思いもあって、昨年11月に新築移転した事務所には、ショールーム的機能も持たせました。C値(隙間相当面積)0.3㎠/㎡、Q値(熱損失係数)0.9W/㎡・Kの性能を有し、暖房は土間に敷設するスラブヒーターと室内に配置する温水パネルヒーター、外壁に張った集熱板から熱を送り込む空気交換保温システムなどを使っています。パネルヒーターは、夏には冷水を回して冷房用に使うこともできます。キッチンには、メーカーの異なるIHクッキングヒーターを3台置きました。他に、ゼオライト配合の珪藻土を塗った壁のカラーバリエーションや、既製品ではなく新築時に余った建材や断熱材を利用してつくったオリジナルワインセラー、同じく天然石を取り寄せたほかは独自に施工した岩盤浴ルームなども、提案例の一つとして設置しています。
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■スタイリッシュなキッチンは、 |
小野寺社長が独自に選び抜いた、 |
国内外メーカーの厨房機器を組み込んで |
独自に設計したオリジナルキッチン。 |
実際にここで調理もできる。 |
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■ 設備の提案のみならず、暮らし全体の提案というスタンスですね。
小野寺/私たちの仕事は「ライフデザイン」だと思っています。変化の激しい現代社会において、生活環境に最も大切なのは「変化に対応していく順応力」。時代がどう変化しようとも、そこに暮らす家族が快適に暮らしていける家。具体的に言えば、フレキシブルで、環境負荷が少なく、ランニングコストが安い家です。その家を構成する一部としての設備機器であり、建材です。設備ありき、なのではありません。大量生産・大量消費の時代は過ぎ去り、これからは環境共生の視点を欠いた設備は社会に受け入れられないでしょう。私たちの提案も、第一に太陽の熱、光、風、水といった自然エネルギーを最大限活用した上で、足りない部分をどう補うかという考え方をベースにしています。設備の前に建物の性能を重視するのも、自然エネルギー──例えばダイレクトゲインなどを活かすことができるのが、そうした住宅であるからに他なりません。性能の高い家と、最新の設備や建材が環境と共生できる時、「やさしさ」という温度が実現できる、そう考えているのです。
とくに暖房においては、性能の高い家ほど必要容量が小さくなり、結果的に暖房にかかる設備代もランニングコストも抑えることができ、ひいてはCO2の削減にもつながります。当社で推奨するのはQ値1.0W/㎡・K以下、いわゆる「Q1」レベルの住宅性能ですが、現状では一般的な高断熱・高気密住宅より割高。「Q1」住宅は普及価格帯になって初めて価値があるはずです。こうした住宅を、例えば坪40万円台で建てるためにはどんな工夫が必要か、私の立場でできることは何かを見つけたいと思っています。
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住宅性能と設備の専門技術をより特化していきたい。
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■非断熱空間に給湯機器を設置。
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写真は100Lの暖冷房用給湯機。
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空気熱を使うヒートポンプで、
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冬は30℃、夏は15℃の
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水をつくり、屋内のパネルに回す。
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■ 今後の取り組みを教えてください。
小野寺/まずは工務店や一般ユーザーの方々に、私たちの事務所兼ショールームにぜひ足を運んでいただきたい。1階のキッチンスペースでは実際に調理もでき、いつか懇意にしているシェフを招いて、ユーザー向けの料理教室や食事会を開き、美味しい食事を楽しみながら、家づくりについても学んでいただけたらとも考えています。新事務所が完成したことで、いま自分に実現しうるベストの「器」ができたと思うので、あとは器に見合うだけのスキルアップが図れるよう、私以下スタッフ全員で経験を重ね、学びを深めていきたいというのも願い。スタッフは、2級建築士をはじめ、気密測定士、BIS(断熱施工技術者)、高齢者住宅リフォームカウンセラーなど有資格者で構成し、今後はCASBEE(建築物総合環境性能評価システム)建築評価員登録などにも挑戦していきたいと考えています。こうした資格取得のバックアップも、会社として積極的に行っています。そして何より、性能の高い「いい家」がもっと増えることがいちばんの願いです。設備で儲けようとしたら、あまり暖かくない家に、たくさん台数を入れるほうがいいわけです。1軒あたりの導入台数が少なくても、それを使う家が増えればいいのです。裾野を広げることで、自分たちも報われ、住宅建築に関わるみんなが喜べる。そんな循環のなかに、私たちも存在していたいと思っています。
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■キッチンのIHクッキングヒーターは、
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日本製2台と独製1台の計3台。
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デザインや機能の違いを確認できる。
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写真はタッチパネルもトッププレートに
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あるスマートなデザイン(独・AEG社製)。
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■──編集後記
「暖房設計」といっても、まだ耳慣れない言葉かもしれない。外の環境にも寒暖や湿度の環境があるように、住宅のなかにも「室内気候」がある。が、伝統的に夏を旨とした日本の住宅では、長らく自然任せの温湿度でよしという気風が醸成され、夏は暑く、冬は寒い家が当然という時代がつい最近まで続いてきた。ヒートショックや環境負荷、経済性、耐久性などの問題と、住宅性能との関係が注目されてきたのは、ここ20年ほどのこと。住宅の高断熱・高気密化が進み、それらの性能が向上することで初めて、室内の温度や湿度、そして空気質の「設計」までも可能になってきたのである。小野寺さんは、10数年前からオール電化に特化した暖房設計を手掛け、この分野では全国的にも珍しいエキスパートの一人。一般ユーザーとの接点は少ないかもしれないが、高性能住宅を手掛ける先進工務店のなかでは、同社と彼自身に寄せられる信頼は極めて高く、関東圏から北海道まで、取引ビルダー・メーカーは100社近くにのぼっている。大柄な身体だが、フットワークはあくまで軽い。態度は堂々としながら、考え方はとても謙虚で、涙もろいヒューマニストでもある。サーフィンをはじめ、激務の間を縫って、大自然のなかに身を置くことにしている。近年は、モンゴルへの旅が増えた。この旅もまた、自然の一員としての「人」に還る時間であり、自然の営みを五感で感じ取る時間として貴重なものという。岩手から、日本の家の性能と設備のベストマッチングが提案されるとしたら、その起点に彼がいる。
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