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| 有限会社 甲斐谷建築企画 代表取締役 甲斐谷修治 |
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地元で生まれ育った木を地元の職人の手で、地元で暮らす人たちに。 |
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■事務所兼モデルハウス。 |
1尺角の大黒柱はスギ。 |
アカマツの床板は |
素足で歩いても気持ちがいい。 |
縦横に張り巡らされた木組みのデザインと |
無垢の木目が美しい。 |
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■ 地元の森林資源をふんだんに使った「みやこ型住宅」の普及に、熱心に取り組んでいらっしゃいます。
甲斐谷/「みやこ型住宅」は、2001年11月に発足した宮古・下閉伊モノづくりネットワーク(事務局:岩手県宮古地方振興局)の林産部会が取り組んでいるもので、宮古・下閉伊地域で生産される木材を使用し、森林資源を保全しながら長期間使用可能な資産価値の高い住宅づくりをめざそうというものです。アカマツ、クリ、カラマツ、キリ、スギなどがこの地における代表的な木ですが、これらを8割以上使用し、構造材(柱・梁)として使用した木が可能な限りあらわしとされた住宅をめざしています。立木の伐採現場や地元の製材所、モデルハウス建築現場の見学会なども随時行っており、弊社でもすでに7棟の実績があります。建築に携わる私たちの緊急の課題は、自然と科学の距離のとりかたについて、しっかりとした方向性を構築することです。環境を破壊するから木の伐採を避けるのではなく、人間が積極的に森に入っていくことで森を生き返らせる方策を探り、伐採した無垢の木材を適切に使うことで、地域の森と人が、未来に健全に継承されていく方向性を見出したいと考えています。
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■岩泉町M邸2階。 |
壁は珪藻土、漆喰、ホタテ貝殻を粉末にした |
塗り壁材の3種を使い分けた。 |
暖房は1階に設置した薪ストーブ1台。 |
1・2階を貫く煙突で |
2階の30畳のスペースも暖かい。 |
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■ 2006年1月、岩泉町に完成したM邸も「みやこ型住宅」の認定を受けました。
甲斐谷/M邸は延べ床面積178.44m2(約54坪)の住宅ですが、ここでは地域材の使用率は83.88%で24.843m3に及んでいます。一般的な在来工法での地域材使用率は20%に満たないのが大半ですから、8割以上という割合の高さがおわかりいただけるかと思います。具体的には土台にクリ・3mを5本、2.1m・33本、柱にスギの大黒柱1本、スギの通し柱4本、スギ役柱・管柱76本、大引18本、梁桁としてカラマツ集成材7本・スギ82本、外装材にスギ外装羽目板14坪、内装材壁・天井にスギ羽目板56坪──といった分量です。
主要構造部の含水率の測定も行っており、M邸の場合ですと、12%(羽目板)〜19%(構造材)。JASの含水率基準が15%〜20%ですから、数値的にも十分に乾燥した木材が使用されていることになります。ホルムアルデヒド及びVOC分析試験も徹底しており、同物件ではホルムアルデヒド測定値が厚労省基準値0.08PPMに対して0.01PPM、アセトアルデヒドが同0.03PPMに対し0.02〜0.01PPMと、空気汚染の問題はなしと言い切ってもいいレベルです。
この物件では熱損失係数(Q値)1.403W/m2・K(年間灯油消費量734リットル)という、国の次世代省エネルギー基準でいう北海道T地域レベルを上回る性能が実証されています。
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裏付けのできる木を使う、裏付けのできる性能値を明示する。 |
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■昼間は現場をくまなく回り、 |
設計・監理の業務は |
いつも深夜にまで及ぶ。 |
「図面がかたちになっていく過程が |
いちばん楽しい」。 |
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■ 「新月伐採」など、伐採時期にまでこだわっています。
甲斐谷/木材は樹齢が高いほど年輪が密となり、強度が増します。間伐することで地面に光がさすようになり、地面の養分が増えるので木にも栄養が行き渡る。結果として、森がよみがえるのは周知の通りです。
伐採時期は、木が水分を吸い上げなくなる10月〜1月がベストとされ、この時期に伐採された木は、デンプン含有率も少なくなるために虫害を防ぎ、暴れにも強いといわれています。
もともと、木は月のリズムによって、生命活動を変化させ、生命活動は満月にかけて活発になり、栄養分(デンプン)等を多く蓄えるようになります。これに対して、下弦から新月の間に伐採された木を「新月伐採木」といいますが、この時期に伐採された木は、さらにデンプン量・水分量ともに少ないために虫がつきにくく、暴れにくいなどの特性を持つのです。
こうした木をできるだけ無垢のまま使用することで、こうした自然の営みを日々肌で感じながら、ほんとうの木のよさを実感いただけると思います。
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■高断熱・高気密のいちばんのメリットは |
「デザインに幅ができること」。 |
大胆な吹き抜けをとっても、 |
床面と天井面との温度差は真冬でもわずか2℃以内。 |
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■ 工法は。
甲斐谷/室蘭工業大学の鎌田紀彦教授が考案した新在来木造構法を採用しています。次世代省エネルギー基準適合住宅でもあり、「Q1住宅」といわれるQ値1.0W/m2・K以下をめざす取り組みも始めています。もともと、在来木造の壁は床下と天井裏につながっており、この壁の中の空気が室内の暖房の熱で暖められると、軽くなって天井裏に抜ける仕組みになっていました。しかし、その分、壁のすき間から暖かい湿気を含んだ空気や、床下の冷たい空気を大量に吸い込んでしまい、壁内結露や断熱材の性能が著しく低下する原因にもなってきたのです。新在来木造構法では、外壁材と断熱材の間に通気層を設け、断熱材の外側は湿気を通しやすいシートで覆い、壁の天井から上と床から下の部分を気流止めシートでふさぐことで、これらの問題を解決しています。
この結果、断熱材の性能は100%発揮され、高い省エネルギー性能で全館暖房を実現し、木材が腐朽する問題もクリアしています。外断熱工法が注目を浴びていますが、施工精度を高めさえすれば、グラスウールの充填断熱(内断熱)は、外断熱工法より優れたいくつもの性能を発揮します。火災時の火の回りを抑え、生産時からCO2の発生を最小限とし、高い断熱性能を発揮しながら、廃棄時においても環境に負荷もかけないという意味では、これにまさる断熱材はありません。年間の暖房にかかわるランニングコストも算出でき、40坪・オール電化仕様でも年間の電気代は暖房・給湯・調理・照明など全て込みでも15万円以下にすることが可能です。
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等身大の建築費用で最高レベルの性能を発揮させることが先決。
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■廊下や玄関ホールなど
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無駄なスペースは排し、
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あらゆる空間を
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生活のための空間とするのが旨。
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動線の一部を書棚にした例
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(宮古市A邸)。
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■ 隙間相当面積(C値)の目標値が、盛岡圏のビルダーより低いようにも思えますが。
甲斐谷/躯体の性能値を高めていけば、最後は開口部(窓)の性能がかなめですが、私たちはあえてアルミ・樹脂混合サッシ(ペアガラス)を採用しています。木製トリプルあるいはLow-Eの樹脂サッシ開き戸を使用すれば、容易にQ値・C値ともに高い性能値となりますが、ここは日本でもトップレベルの日射量がある地域であり、そうした気候風土を背景とした掃き出し窓、引き違い窓を頻繁に利用する暮らしの文化があります。アルミ・樹脂混合サッシとLow-Eの樹脂サッシを比べた場合、費用的には数十万円の差額が出ます。木製トリプルと比べると100万円以上です。日射取得などパッシブデザインに配慮すれば、真冬でも暖房がいれないほどの室内気候となりますし、通風を緻密にデザインすることで真夏でもエアコンは不要となります。性能を向上させ、その分、費用の負担を求めていくことよりも、施主様の負担をできるだけ少なくする。もしくは、もっとほかのことに回していくといった考え方です。地元の木を使うことも、性能値にこだわることも、高価な費用で実現するのではなく、等身大の建築費用で実現していくことに、住宅建築のプロとしての役割があると思っています。
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■この秋に完成した宮古市I邸も
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「みやこ型住宅」に認定された。
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床材はナラ、柱・梁・天井材はスギ。
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大黒柱は1尺角とし、
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家のランドマークとした。
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■──編集後記
本州最東端に位置する宮古市。人口約6万のこの街で、高性能に特化した住宅を手掛けるビルダーの代表である。2006年現在で「みやこ型住宅」はすでに7棟の実績。「地元の木を使う」ことだけに終始するビルダーとは明確な一線を画しながら、温暖なこの地方においてもC値・Q値ともに北海道レベルをクリアしている。使用率8割を超える地元無垢材にとどまらず、珪藻土や自然系塗料の採用の徹底で、空気質にも明確な裏付けを示す。施工難易度が高いグラスウールにこだわりながらも、高い性能を体現する背景には、断熱・気密に特化したノウハウを持ち、無垢材の扱いを熟知した職人技術がある。
かいって、これ見よがしに無垢材を主張させるのではない。塗り壁のなかに、さりげなく、時には驚くほど大胆にそれらを配置することで、デザインに奥行きと深さをもたせていくのが、甲斐谷流のデザイン。わずか数センチ腰板を低くする、視覚に入る無垢材をあえて全体の4割程度に抑制する──。そうした細かな配慮を随所に散りばめることで、空間のなかでむしろ木が浮き立って見えてくるのは不思議でもある。穏やかな表情で、微笑みかけてくるようなその空間美は、温和でやさしい甲斐谷さんの性格がそのまま具現化されたものかもしれない。工務店の機能を有しながら、高いレベルの設計力を備えた数少ない地域密着のビルダーでもある。
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