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| 有限会社 杢創舎 代表取締役 澤口泰俊 |
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伝統構法と大工の「年季」と省エネルギーと。 |
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■伝統構法を支えるのは熟練の大工たち。
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手入れの行き届いた道具が、早く正確な |
仕事に繋がっていく。 |
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■ 一貫して、近くの山の木を使い、伝統構法を駆使した住宅にこだわってきた印象があります。
澤口/木の話ばかりしているので、古民家調の住宅をイメージされる方も多いかもしれません。しかし、これからの住宅を考えるときに、エネルギーや環境問題への配慮は欠かすことはできません。全館暖房や高断熱・高気密・計画換気なども創業当初から建築計画の中で標準的に存在していますし、地中熱ヒートポンプの実績経験を基に、空気ヒートポンプ・太陽光発電・ガス発電(コウジュネ)など新たな取り組みも視野に入れています。イニシャルコストだけではなく、建築後そこに住んでからのランニングコストまでを算出し、CO2の削減量も、今後は必須条件となります。横貫免震工法の採用と建築基準法に合わせた耐震工法の組み合わせもその一つ。オール電化と薪ストーブの併設などもあります。
要は、古くから伝えられた技術といまある技術の融合です。構造躯体は伝統的な構法で組み上げ、室内の極端な温度差をなくして結露の発生しない温熱環境を実現し、仕上げ材も地場無垢材などの使用により、木の香りあふれる空間づくりを心掛けています。加えて、建て主さんと会話しながら平面計画が出来上がるので、家を建てる楽しさをそこに感じています。
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■「イーハトーブの森と家づくりフォーラム」の |
活動の一環として、岩手大学演習林から |
伐り出した南部アカマツの長尺材。 |
来春竣工予定の物件で、梁として使う。 |
作業場には、8メートル以上のものが10本、 |
自然乾燥させられ静かに出番を待っていた |
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■ エネルギー消費の削減を意識しながら、伝統構法や大工さんの年季を大切にし、住む人も快適な住宅──と、いわばいくつもの要件を同時にクリアしています。
澤口/伝統的な構法にこだわる限りは、やはり何十年も積み上げられた大工職人の経験が必要です。よく年季といいますが、無垢材を扱うには必ずこの年季が必要であり、杢創舎では、これを車輪に例えて無垢材と職人の技は両輪だと常々話しています。
この数十年間で、住宅業界も大きく変化しました。よりよい快適さを求めるようになり、結露・断熱・換気・乾燥・加湿・介護・間取・可変・通風・採光・遮熱・防犯などについて、経験値で語れる方々も各所に登場されています。
しかし、本来の構造躯体である無垢の木を経験値で伝えることのできる大工職人などは、逆に激減しているのが実状です。予算が許せばQ値を限りなく向上させる事は出来ても、人の積み上げた時間を買うことはできません。また、環境破壊や森林破壊が問題視されているのに、近くの山にある木材の使用が伸び悩むのは不思議です。日本国土の7割は森林。近くの山に使える木は存分にあるのに、木材の自給率は2割以下。山が荒廃すると、川も海も、そして人間の生活も危機にさらされるというのは、いまの環境問題に如実に示されてもいます。
それと同様に、各種の数値と共に考えるべき課題があると思います。私自身が、数値のみ考えていた時代に言葉にならない不安感を感じていました。どこかに、そろばん勘定すら意識したからです。本来は、家族皆の夢の実現である家づくりに関することだから、楽しくありたいものであり、それは住んでからも楽しめる必要を意味していると思いますが、その楽しさは必ずしも数値と比例するのものでないのでは? と思います。そこで、「住まいという家族の夢+地場の木材使用=循環と豊かさの実現」という、数値に加えた計算式を私は考えています。
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山側・製材・大工・施主──昔はみんな繋がっていた。 |
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■山に行くと不思議と元気が出る。 |
山から里までが繋がる家づくりが願い。 |
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■ 「イーハトーブの森と家づくりフォーラム」というNPOに参画されているのも、そうしたお考えの延長として捉えてよいでしょうか。
澤口/2年前に立ち上がった組織で、メンバーは大学の先生や設計士、林業関係者など異業種の方々が集まっています。山から製材、そして建物への木材の流れを明確にして、顔の見える仕組みの見える小さな流れの循環を見出していこうとする取り組みです。私も会の副代表として活動に参加させていただいています。
昔は、山側・製材・大工──と、みんなで1本の原木の話題を共有することで行っていた単純で正確な家づくりの手法が、いまではほとんど皆無になりました。山と大工の間には製材という通訳が必要です。その意味では、販売中心の材木屋さんも現在は同様に必要ですが、片方が得するのではなく、双方が1本の木を中心にお互いが良くなることを目指すのが大切なのです。木が動くのは当たり前と言い放せば、無垢材を上手に使い切る技術の成長がなくなります。木の割れや動きを否定してしまうと、どこかに歪みが生じます。昔ながらの木を読み取る技と、自然ならではの曖昧さを受け入れる大らかさを併せて学びながら、今後も山に招き入れていただける日々が多くなることを期待してやみません。
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■小槌の音が周囲に心地よく響き渡る。 |
精緻な手技が、自らの現場で |
検証されていく時間でもある。 |
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■ 「杢創舎」という社名にも、木や職人への敬意が込められているわけですね。
澤口/私はもともと設計事務所で構造計算を主に学んできました。自身が大工工事をすることは少なかったのですが、設計という仕事を通して次第に現場に惹き込まれ、2001年、ついに工務店を立ち上げました。その時考えた社名が「杢」という文字でした。木目へのあこがれもあり、大工という字を縦に1本の木で繋げると「杢」になります。人間と同じで杢目も柾目も同じものは一つもありませんから、育った木の性質を読み取り、できるだけ生かして、山からいただいた恩恵を住空間の中に創造することを学び、それを実践していくことで、循環形成の再構築という本来の姿に戻ることを目指したわけです。
杢創舎では、建て主さんとよく会話し、家づくりの計画を練ることに時間をかけます。建築予定の敷地から読み取れる、通風・採光・目線・景色・環境・建築基準法など、その場に合わせた建物の内容を見つめ、住まい方の変化にも対応できる間取りを考える過程で、身近にある自然素材(無垢材)を無理なく使い、それをそのまま室内の空間に現した内容で提案しています。
無節材や銘木と呼ばれる高価な木材ではなく、節もあるし多少割れたり動いたりもするけれど、山から運ばれた原木を生かした骨太で安心感のある、購入しやすい価格の材です。それらを柱や梁だけではなく、下地材などにも利用して使い切ることで、はじかれる平均価格は、建て主さんのみならず山側に対して私達ができる配慮の一つです。
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山からいただいた「恩」に手を合わせる。
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■図面や構造計算の業務はもちろん、
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日に数回は、現場にも顔を出して
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工事のディテールに眼を光らせる。
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職人たちと言葉を交わすときには、
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いつも笑顔を忘れない。
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■ そうしたなかで、思いがけない山や木との出会いがあるわけですね。
澤口/復元不能な寒帯・熱帯地域から伐り出され、輸入された木材を使用することより、それを使うことで、結果として森林を豊かにできる近くの山の木を使用していただく。そんな思いは常にあります。近くの山に入ると、ときには驚くような良材との出会いがあります。私は、それを建て主さんと木との出会いとして位置づけ、その時々で出会った材をそのまま提供してきました。
提示金額は、できるだけ原価開示し、購入価格そのままというケースがほとんどです。しかし、できれば原価の+数パーセント程度を、透明性を持たせた上で山元に還元する手法を探り始めてもいます。
現状では製材所からの木材購入がほとんどですので、山には直接戻らないのが現実です。山からいただいた恩に手を合わせて感謝し、そろそろお返しできれば…という願いはありますが、私どもだけでなく、施主の皆さんにもこうした現実を理解していただくことで、その出会いがかたちとなり、次代にも継承できる循環ができることと信じています。
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■木と職人と施主…さまざまな出会いの妙から |
唯一の家ができる。 |
木造の許容応力計算をこなすのも同社の特色。 |
断面算定、長期荷重への算定などを行うことで |
耐震性能や柱梁1本ごとの強度の |
理由付けを可能としている。 |
長らく、構造計算を中心に仕事をしてきた |
澤口社長の面目躍如。 |
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■──編集後記
杢創舎の取材現場では、いつも大工さんの動きの早さに目を見張る。いまも継ぎ手、仕口などの精緻な加工にこだわり、現場での細工や微調整も少なくないが、切る、削る、打つ、組む…といった作業が、とにかく早く、動きに無駄がない。棟上げ一つとっても、見る見る間に家の輪郭が組み上げられていくのに驚いたことがあった。
「近くの山の木にこだわる」という家づくりが、「スロー」や「ロハス」といった流行語の象徴であるかのように、一つのムーブメントになりつつある。杢創舎では、そうしたムーブメントとは一線を画し、断熱・気密といった温熱環境にも数値的な裏付けを示し、CO2削減のみならず、予防医学までを視野に入れた温熱環境の整備を忘れてはいない。無垢材優先で、暑さ寒さが当たり前といった家では通用しない現実を見据えているのである。逆に、近場の山の現状を無視して、性能値だけを追求し、その答えが省エネルギー=環境にやさしいといった論理を排す厳しさもそこにある。
大工だけではなく、山や製材所にも職人がいる──といった視点も大切にしてきた。そうした職人たちの存在を無視することが、やがては山だけでなく、地域の衰退を招くという考えである。施主と山に入り、山の現場、製材の現場、大工の現場をともに見学する機会も数多く設けている。1本の木が、生涯そこで生きる家に存在する理由が明確に見えてくる。おのずと、山や木や職人、そして家に対する畏敬の念が、家族の根っこに育っていく。杢創舎の家を建てることは、自分たちが生かされている環境を見つめ直し、その営みに感謝し、明日の暮らしのあり方を真摯に考える作業そのもののように思えてくる。
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