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| 有限会社 岩手ハウスサービス 代表取締役 安藤敏樹 |
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生活者の視座に近い位置に立ってこられたのが幸いしたのだと思う。 |
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■「住宅建築は地場産業であるべき」 |
と語る安藤社長。 |
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■ 岩手県内では高断熱・高気密住宅の草分け的な存在ですが、社長ご自身が住宅建築の世界をめざしたきっかけは。
安藤/いまから25年ほど前、大学生活をおくった札幌市で、盛岡との住環境の違いに驚いたのが原体験にあると思います。当時はまだ、十分な断熱仕様ではないものの、住んでいたアパートでさえ真冬に水落としの必要もなく、室内で寒さに震えるようなことは皆無でした。大学を卒業し、出身地の盛岡で不動産デベロッパー会社に入社しましたが、開発地に建つ住宅を見るたび、自分の過ごした北海道の住宅と比べ、これでいいのかという疑問が高まっていったのです。
4年ほど働いて退社を決意し、リフォーム会社を興して独立しようと考えていましたが、そんなとき、建材会社に誘われて北海道に高断熱・高気密住宅の視察に行き、自分はこういう家づくりをやりたかったのだと確信しました。不動産は、この土地がいいと思っても、所有者が応じなければ買うことはできないし、同じ土地は二つとない。でも土地の上に立つ住宅ならば、自分たちさえしっかり建てれば、どのお客様にも同じようにいい建物を建てることができる、そんなふうにも思ったのです。
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■「いわて省エネ・新エネ住宅大賞」(岩手県主催) |
2005年度新築部門大賞受賞物件。 |
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■ そうした考えを、地域に根ざして、具現化されようと思ったわけですね。
安藤/最初から住宅建築の世界に入ったわけではなかったからこそ、結果として、それが生活者の視点に近かいところから住宅を考えていく思考回路に結びついたのかもしれません。高断熱・高気密や全館暖房について、いま以上に理解のなかったあの当時から、多くのお客様に納得していただき、仕事ができてきたのは、一方的に自分の建築論を押しつけるのではなく、私自身がお客様の素朴な疑問に素直に共感し、専門用語に頼らず、わかりやすい言葉や例えで説明することも一因だったではないかと思っています。
住宅建築は地場産業であるべきです。住宅はその土地の自然環境と密接に関係しており、季節ごとの気温、湿度、風向き、日射量、降雪量も如実に異なりますし、独自の風習や文化も無視できません。そうした要素を包括した家づくりは、地域の風土も文化も熟知した地域工務店にしかできないはずです。
岩手にもローコスト住宅を全国展開する企業や大手ハウスメーカーがどんどん進出しています。でも、私は気にしていないのです。
誤解を恐れずにいえば、私は当社の家づくりに共感してくれる、本当に良い性能の住みやすい家がほしいと願い、そのために本を読んだり勉強しようとしているお客様の家でなければ建てられません。仮にいくらでもお金を出すから、性能を度外視していいから、自分たちの希望通りに建てろ──といわれても建てることはできないのです。それが、施主の生活に責任をもつことです。
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岩手の住宅が、全国の性能住宅を牽引していく役割を果たしていけたら──。 |
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■さらに「いい家」をつくりたいと、 |
研究会活動や技術向上にも余念がない。 |
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■ Q値(熱損失係数)1.0を下回る住宅も発表されました。
安藤/地域工務店は大手ハウスメーカーやローコスト住宅と闘うのではなく、第一に建物としての質を上げることに注力すべきだというのが私の持論です。
売上を上げることも大事でしょうが、住宅建築のプロである自分たちが、お客様に自信をもっておすすめできる「いい家」を普及したいというのが根本の願いであり、現実にはそういう住宅を年間に100棟も建てられるはずがないのです。いまの当社の規模では、新築なら年間7〜8棟で精一杯。しかし、そういう姿勢を理解いただけるお客様がいたから、今日までやってこれたのだと思います。
2006年8月には、熱損失係数(Q値)が1.0Wを切り、灯油消費量が次世代省エネルギー基準(岩手=U地域)のほぼ4分の1以下になる住宅を建てました。この住宅は、岩手県立大学の先生方や国内の断熱材メーカー、窓サッシメーカーや換気設備メーカー、設計事務所や工務店、温熱環境のプロが集まる「Dot.Project」の活動の一環として発表した住宅でもあります。技術をオープンにしてお互いに学び合い、岩手型の高性能住宅造りが、ここに来て一気に結実しつつあるように思っています。
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■通路幅は車いすでも楽な120センチ以上が標準。 |
加齢後の改修も必要最低限で済むよう配慮する。 |
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■ Q値1.0以下の住宅のランニングコストは、具体的にどの程度と予想されていますか。
安藤/Q値1.0以下に抑えると、暖房エネルギーが、これまでの当社の標準であった次世代省エネルギー基準T地域仕様の住宅の半分以下になります。同U地域仕様の住宅と比較すると、4分の1以下になるはずです。
実際に完成した物件では、年間の暖房エネルギーが灯油換算で約465リットル(Q 値0.94w、室内平均温度18℃で試算)と試算しています。今後はお客さまの了解のもとで、継続して実測していく予定です。オール電化の住宅で考えると、従来、年間の電気料(暖房、給湯、その他電気機器の使用すべてを含む)が15万円程度だとすると、Q値1.0以下になれば10万円を下回ると思われます。
もっとも、暖房エネルギーを抑える一方で、夏の冷房エネルギーの負荷を増やしては総合的なエネルギー消費の削減にはなりませんので、暖房も冷房も最小限で済ませるために、非暖房期の日射遮へいについても、さまざまな手法を検討しています。機械的な技術にかかわらず、オーニングやすだれ、植栽など総合的に考えていけば、イニシャルコストもかかりません。
ローンが終わっても、生涯つきまとうランニングコストだけに、それらを限りなくゼロに近づける住宅は、私たちプロの責務。地域工務店の敵は地域工務店ではないことに同業者が気づき、地域工務店がこぞってこうした活動に取り組んでいけば、県外から進出するハウスメーカーやローコストの企業にも、「岩手には太刀打ちできない」という印象を与えることができるかもしれません。
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複数社で見積をとるなら、最低でも「C値0.5、Q値1.5以下」を目安にすべし。
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■のびやかで開放的なデザインは
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高断熱・高気密だからこそ可能になる。
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■ そういう工務店とローコスト住宅やハウスメーカーと見積競争にかけられることが多いのでは、ユーザー自身が勉強不足といわれても仕方がありません。
安藤/住宅は生涯でも最大の買い物ですから、そうした心情も理解はできます。しかし、ローコスト住宅やハウスメーカーと一緒では、最初から土俵が違います。先ほども申し上げたように、私たちは、どんなに少ない予算でも性能を落とすことは決してありません。反対に、どんなに予算があっても、性能的な側面を落としてくれという要求にも応えられません。
工業化・規格化された住宅とは、住宅への考え方も建築手法も異なりますので、もし見積や設計を複数社に依頼するのであれば、最低でも「C値0.5以下、Q値1.5以下」をクリアできる会社だけで、見積を比較するという方が現実的な手法かと思います。とはいえ、住宅も日々進化しています。私たちもQ値1.0を切ったからこれでよしというのではなく、日々の勉強を欠かせません。「Dot.Project」のほか、「INS住まい環境研究会」(事務局・岩手大学)「住まいと環境 東北フォーラム」(事務局・東北大学)「岩手住環境技術研究会」などに所属していますが、これからも常に最新の技術を研鑽していくつもりでおります。
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■家づくりを語る真剣な眼差しも愛犬を前にすると‥。
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事務所では、ミニチュアダックスフントの
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「カレン」と「カノン」が来客を迎えてくれる。
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■──編集後記
性能を明示した住宅ではすでに20年の実績があり、間もなく100棟を超える。そのなかでオール電化住宅は4割を占めている。全棟気密測定の上で引き渡しというのも創業以来、一貫していることだ。全棟地盤地質調査。ホルムアルデヒド濃度測定。内装材には無垢材、内装ドアにはパインドア、玄関ドアには木製断熱ドア、その他珪藻土、漆喰など、できる限り自然に近い素材を使用。最低でも50年以上の耐久性。パッシブデザイン、ヒートポンプ技術の応用、雨水貯留、屋根緑化など、さらなるエコロジカルな対応──などは、オプションではなく「標準仕様」である。これらを、自社スタッフによる施工で徹底する。いわば、社員全員が技術者である。
安藤さんとは、十数年来のおつきあいとなる。お会いするたびに、よくしゃべる。口も悪い(お客さんの前ではそうでもないらしいが)と思う。どちらかというと、無口で無骨な社長の多い工務店の世界では異質な人といってよい。しかし、この人と、これだけ長い間おつきあいができたのは「徹底して、やることはやる」といった、明解な有言実行の姿勢があったからにほかならない。開口部一つとっても「最低でも樹脂のLow-E」といった姿勢を崩さないのは、結果として、ユーザーの得にとなり、100棟に及ぶ実績を築き上げた。容易に真似できることではない。Q値1.0以下の住宅も、来春までに4棟手掛ける予定。建築手法としての「ゼロエネルギー」ではなく、「お客様にとって生涯、光熱費がかからなういほうがいい」という生活感覚が根底にある。そうした姿勢は、昨今はやりのデザイナーズハウスや作品主義の建築家たちの住宅とは、まさに、対極にある。
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