家と人。
「家」の現場
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vol.8

家族の歴史を未来に継承する、住宅再生=リノベーション==という新たな選択肢。

立花清久 株式会社タックホーム代表取締役

「南面信仰」から
いかに脱却するか

外界に対して閉じることを旨としてきた西洋建築とは逆に、日本の家屋は長い間開けることを基本とし、住宅建築においては特に、南側の開口部を大きくとって日射を導く手法をとってきました。この「南面信仰」はいまも根深いものがあり、確かに光がたくさん入って暖かく快適ではありますが、直射光が眩し過ぎてカーテンを閉めたり、部屋の隅が暗く見える経験は誰にでもあるはずです。これは目の順応と錯覚であり、直射光と反射・拡散光の違いでもあります。直射光は暖かさをもらたす反面、空間に明暗を付け過ぎ、曇天の日や薄暗い部屋の方が全体が見えるという現象が起きるのです。
 一方、北側からは直射日光は得られませんが、北側の光は天空光といって日の出から日の入りまで1日を通じての光の変動が少ない向きになることから、照度を均一に保つメリットがあります。美術館や昔の写真館などの採光によく使われた手法ですが、これを「北側採光」といいます。
 北側に大きな開口部を設けると、冷気がガラス越しに入ってくるなど不安に思う方もいるかもしれませんが、建物の性能を向上させ、熱的に弱い部分となる開口部にこそ断熱性能の高いそれを配置することで理想的な間接採光となり、問題は難なく解消できます。

北側からは直射日光は得られないが、1日を通じて光の変動が少ない向きになることから、照度を均一に保つメリットがある。

スペックでは表現できない
快適性を内包する「北側採光」

「北側採光」は、ラジオシティ(光の計算)の高度さと豊富な経験が求められますが、光を操り、快適な空間や温熱環境をデザインするという意味では環境デザインということもできます。数値的なスペックとしては記載されにくい手法ですが、少なくとも個人住宅には数値的なスペックにプラスした快適さや心地よさこそが重要であり「北側採光」もまた、環境デザインのなかの隠し球的な設計手法といえるわけです。
 敷地条件にもよりますが、暗くなりがちな北側を吹き抜けとして「北側採光」とすることで、リビング・ダイニングの明るさが均一となり、そのリビングの一角に階段を設けることで、階段への採光も均一にできます。晴れた日には、まるで絵画のように開口部に青空がをくっきりと切り取られ、壁面を装飾。南面に大きく開口部をとった場合でも、軒や庇の出を計算することで日射のコントロールは容易であり、「南」と「北」からの採光をふんだんに採り入れることでの心地よさもまた、スペックでは表現しきれないものです。

通常の天井高から吹き抜け部分に移動することは
「美しい裏切り」に遭遇できる。
また、この場合も「北側採光」により空間の隅々まで
やわらかな光に包まれ、端から端まで陰を感じることもない。

ダイニングと階段を「北側採光」により1日中、安定した光で包み込む。

吹き抜けのリビングは、夜明けから夕刻まで安定した光を確保でき、しかも目も疲れない。直射日光では新聞を読むのもきついが、北側採光の光は読書にも最適な光。

横に流れる視線と縦に流れる視線を解放することで、
視線はよりゆたかで広がりを持つ。深呼吸したくなるような開放感。


たちばな きよひさ●1966年岩手県紫波町生まれ。長年大手ゼネコン現場で監督(横浜市)を務めるが、父の工務店の後継ぎとして岩手に戻り、1998年から高断熱・高気密の家づくりを専門に手掛ける。(株)タックホーム代表取締役。一級建築士。

東面に設けた吹き抜けからの日射も安定採光。夜にはお月様も眺めることもできる。

土地や建築面積は狭くても、間取りの工夫次第では圧迫感のない広がりある空間づくりは可能。上下・水平の視線の抜けをとり、吹き抜けは上にいくに従い、色を淡くすることで極端な広がりを抑える。

トップライトから降り注ぐ光は四季を通じて安定。光は風と一体でもあり、窓の開閉によって通風を自在とさせることが換気の基本であり、理想的なパッシブデザインとなる。

家は平面だけでなく立面、斜め面でも考える。住まいを立体的に設計することで、光と風を制御し、縦横・斜めにも視線の広がりが得られる。

2階の吹き抜け周辺は書斎やパソコンコーナーとし、上下のつながりを演出。家族との接点を気配で感じさせる。

かつては、北側に大きな開口部を設けると、冷気がガラス越しに入ってくるなどの不安があったが、建物の性能を向上させ、熱的に弱い部分となる開口部にこそ断熱性能の高いそれを配置する。

DATA
工法 木造軸組(完全6面体キューブ構造)
平均隙間相当面積 0.3cm2/m2
平均熱損失係数 1.6W/m2・K
社名・連絡先 (株)タックホーム
岩手県盛岡市津志田西1-17-33 TEL 019-636-1772

http://www.tachome.com/  E-mail
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