「家」の現場
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vol.13

岩手型「Q1」住宅の明日。

安藤敏樹 (有)岩手ハウスサービス代表取締役

岩手県内における
「Q1」住宅の先駆けとして

1986年の創業から間もなく、高断熱・高気密住宅に取り組み、すでに20年以上が過ぎました。断熱・気密性能ともに数値で裏付けのできる住宅を…との願いで、1棟1棟に取り組んだ住宅は2009年末で120棟を超えるまでに至っています。
 2006年にはQ値1.0W/m2・K以下を目指し、より環境に負荷をかけない住宅の普及をともに考えていく産学連携組織「Dotプロジェクト」第一棟目の住宅を弊社が完成させ、この春までに同レベルの住宅は弊社だけでも12棟を数えます。
 しかし、岩手県内でそうした住宅がどのくらい普及しているかといえば、依然としてごくわずかに過ぎないのではないかといわれています。高断熱・高気密住宅の指標の一つとして国の次世代省エネルギー基準がありますが、北海道ではQ値1.6W/m2・K以下であるのに対し、岩手県のほとんどの地域は1.9W/m2・K以下。この数値が最高の目標とされている状況がいまも歴然としてあることは残念なことです。
 「Q1」仕様の住宅と次世代省エネルギー基準Ⅱ地域仕様の住宅とでは、暖房エネルギーの消費量は約7割も削減できますし、これまで弊社の取り組んできた高断熱・高気密住宅と比較しても4割ほどの省エネルギー性能を発揮することが実証されています。
 暖房エネルギー消費量は少ないほどいいわけで、少なくなればそれだけ地球温暖化への影響も軽減されます。かといって、やみくもに費用をかけた「Q1」仕様がベストではなく、対費用効果を計算しながら、家計にも環境にも負荷の少ない「Q1」住宅の普及がこれからの課題だと考えます。

吹き抜けをとっても、
床面と天井面との温度差はほとんどない。

ハイスペックの性能・設備と
パッシブデザインを
どう組み合わせていくか

「Q1」住宅はより積極的な開口部の断熱強化、換気の熱損失の低減、日射取得に代表されるパッシブデザインの徹底など、単なる断熱性能の向上だけではない複雑な要素が絡み合い、暖房設備の選択によって暖房感も異なります。
 高い気密性が保持されなければ、どんな換気設備を使用しても省エネルギーとはなりませんし、熱ロスの大きい換気設備も問題です。弊社ではスウェーデン製の熱交換換気システムを主に採用してきましたが、これでも熱ロスは10%ほど出てしまい、20?30%ほどの熱ロスを出してしまう換気設備も現存し、選択が難しいところです。
 日射取得を緻密に計算することも、さらに大切な課題です。岩手県は北海道よりも日射量も多く、この手法を暖房エネルギーに転換する技術を使用しない手はありません。南側は日射を取り込みやすくし、北側の窓は1日中熱を逃がしにくくする。冬は日射を取り込みやすくして、夏は日射を遮る工夫をする。南側に庇を造るか、あるいは窓で夏の日射を遮るのか。そのあたりでも省エネルギー性能は変わってきます。躯体の断熱は、次世代省エネルギー基準でかなりのレベルまで上がってきましたので、換気や窓の設計・配置などを整理すれば、断熱材をさほど厚くしなくても、暖房エネルギー消費量はかなり削減できます。各自の住まい方に即した設計、デザインも無視できません。こうしたことからも断熱材をむやみに増やし、設備に頼るだけで「Q1」住宅ができるわけではないことがおわかりいただけることと思います。
 こうした技術に加え、設備系の技術開発や熱を供給する住宅設備が進化してきました。ヒートポンプ暖房などと併用すれば省エネルギーに加え「省CO2」がより具体的になってきます。すでにエコキュートなど、ヒートポンプ技術で給湯エネルギー量も2分の1から3分の1にすることが可能になっており、暖房設備のヒートポンプ化や太陽光発電システムとの併用で、CO2削減が数値としても裏付けることが可能になります。弊社では2008年から、光熱費のシミュレーションとともにCO2発生量も1棟1棟に明示しており、今後はこうした数値も住宅選択の目安になるでしょう。

設計上のバリアフリーは常識として、
温度のバリアフリーこそが
快適・健康住宅の基本と考えている。

水平・垂直のひろがりを大切にしながらデザインした大空間の居間。
温度分布はどこも一定。

第一種熱交換換気システム(スウェーデン製)は
熱ロス10%前後しかない高性能。

行き止まりのない回遊型のデザインは、
熱効率もよく、生活に潤いを与えてくれる。

開放すればリビングと一体になる和室。
襖の開閉で空間の仕切りも自在の可変性は魅力。

壁の表情をゆたかにしてくれるニッチ。
季節の草花やお気に入りのグッズで家族を出迎える。

できるだけ間仕切りをなくし、大空間のなかに生活の用と美を考えていくのもデザインの一つ。
ホールを利用した書斎コーナー。

県産材を中心に、できるだけ近隣の材を活用することもCO2削減につながっていく。

南面にキャッツウォークを配し、開口部のメンテナンスにも配慮。
階段手すり周りの表情も遊び心に満ちている。

日射遮へいを兼ねた2階バルコニー。夏場は、日射をいかに遮断するかが「Q1」住宅の住み心地を左右する。


DATA
工法 木造在来軸組工法
隙間相当面積 0.17cm2/m2
熱損失係数 1.25W/m2・K
社名・連絡先 有限会社 岩手ハウスサービス
岩手県盛岡市高松2-2-7 TEL 019-663-3833 FAX 019-663-3834
http://www.iwate-house.co.jp  E-mail
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