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「家」の現場
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vol.7

暮らしと環境の明日を凝視しながら「普遍性」と最高の「性能」を提案。

株式会社 大共ホーム 【岩手県岩手郡滝沢村】

お客様の前で「NO」はいわない。

洋館の「正統」ともいえる大共ホーム本社社屋。
そのデザインは、時間に洗われながら年々重厚さを増し
堂々とした風格さえ漂わせる。

大共ホームの施主宅を訪ねると、不思議と同じような言葉を聞くことが多い。「夢や希望を伝えたとき、他社からは予算や技術を理由に断られた事柄でも、大共ホームだけは『やってみましょう』といってくれた」──というのである。

施主にとっては一生に一度かもしれない家づくり。予算に限りはあるとしても、ああしたいこうしたいと夢を膨らませるのは当然のことである。プロからみれば無謀かもしれない事柄でも、「夢」を頭ごなしに否定されたら誰だって気が塞ぐだろう。

「NO 」がない。「イエスマン」なのではなく、施主の夢をプロのアイデアと技術で形にしていく努力を徹底して惜しまない。これは、社長の橋本の揺るぎない信条でもある。

「規格住宅主体の大手ハウスメーカーは論外ですが、完全注文住宅が基本であるはずのビルダーが、お客様の希望に安易に『NO』をいうとしたら、それはビルダーが自分たちをただの『技術屋』だと思っているからに他なりません」(橋本)

言い換えれば、建築士や大工など、施工現場に密接にかかわる「技術屋」ほど、お客様の夢を、自分の持つ技術と経験にあてはめようとする──というのである。辛辣ではあるが、「家づくりのプロセスは楽しいものでなくてはならない」「プロに問われるのは施主の夢をしぼませることではなく、施主の想像力をかき立てること」が持論。現場を知る者ほど現場で施工しやすいプランを提案したくなるのが人情。ゆえに、同社では施主との打ち合わせに技術職は同行させない。技術を軽視しているからではなく「技術は、本来裏方に徹するべき」(橋本)だから。

現場監督は「最終イメージ請負人」である。

1級建築士からインテリアコーディネーター、
ローンアドバイザー、さらには風水相談員まで。
専門知識と技術を持つ多様なスタッフが
施主を「面」としてサポートする総合力は、
地域ビルダーのなかでも特筆すべきものがある。

施主の最初の窓口となるのは、営業担当であることが多い。しかし、その後はケースバイケース。施主のニーズに応じて、基本プランを担当する者やインテリアコーディネーターなど、家に携わるプロが「面」として対応し、適宜打ち合わせに入っていく。社内の連携が密なので、打ち合わせに伺う者が変わっても情報は常に共有される。橋本が現場の技術者に求めることは、設計サイドで意図した空間をいかに美しく忠実に仕上げるか、その一点。そこが技術者の腕の見せ所だというのである。

同じ図面・同じ素材を用いても、施工者が違えば空間の仕上がりは全く異なるものになる。塗料の塗り方一つ、壁のくりぬき方一つ、軒先の納め方一つで、空間の印象が変わるのは当然。施主の希望をプロの視点でフォローし、繊細なバランスで突き詰めた設計プランを、絶対に台無しになどしてほしくない──技術だけではなく意匠においても良い意味でこだわりを大事にしてきた橋本の、強い思いが根底にある。

当然、現場に寄せる期待も大きい。「現場監督は『最終イメージの請負人』なのだから」である。だからこそ、すでに十分な信頼を寄せつつ「もっといろんな現場の仕上げを見ろ、自分の引き出しを増やせ」と、厳しい言葉が口を突いて出る。「人は自分の経験のみに頼ろうとすると、素材一つとっても扱い方が単調になってしまう」。橋本は自戒を込めてそう話す。

インスピレーションを蓄積する旅。

旅先での一枚。住宅のデザインや素材の使い方などは、
成熟した住宅文化を持つ欧米に学ぶことが多い。
アジアへ足を運ぶことが少なくないのは、
欧米で気に入った素材をより安い価格で求め、
ユーザーの負担を減らしたいという思いから。

社員に「引き出し」を増やせというからには、社長である自分こそ誰よりも豊かな「引き出し」を持たねばならない。

見聞を広げる先は国内外を問わないが、海外出張だけで年に3~4回。ここ1、2年で、カナダ、アメリカ、ドイツ、スウェーデン、ベトナム、中国を、場合によっては複数回訪れた。現地の住宅、展示場などは必ず見て回る。街並み、住宅デザイン、設備、素材、インテリア、部位の納め方…。自分たちが岩手でつくる家にどう活かせるか。一方で、あえて力を抜き、意識を動かさず、全身で「感じて」みることも大切にしている。しばらくすると、蓄積されたものがインスピレーションとなって現場に現れる。

「大共ホームだったらここまでできるというものを、お客様にどれだけお見せできるか」。ユーザーは、自分たちが思いもよらなかったアイデアを、プロの視点で出してほしいと思っている。家の広さや間取りを知りたいのではない。「本当はここでどんな暮らしを楽しめるか、どんな夢を持てるかを知りたいのです。自分たちはそれにお応えしたい」(橋本)。

蓄積された知識や技術、国内外での「見聞録」は、スタッフやお客様が壁にぶち当たったとき、ふと、向こうからやってくる。「引き出し」なのではない。むしろ「感じてきたこと」が自分のなかで時間に洗われ、個性にあぶられた末に、柔軟なかたちとなって成熟し、いくつもの選択肢となって目の前に並ぶことになる。豊富な選択肢のなかから選んでいく作業は楽しい。夢を選ぶ作業でもある。そして、それが形になっていくのは、もっと楽しい。

家と人の、ストーリーを伝えるための見学会。

3月に行われた盛岡市西見前での完成見学会、前日。
この家に関わってこなかったスタッフも全員、
この家と人の「ストーリー」を共有することにした。

今年から完成見学会のスタイルに変化が見えてきた。従来は、来場者に自由に見学してもらい、スタッフは求めに応じて質問に答えたり、案内をしたりする、見守り役のような存在だった。最近は、営業も事務も設計者も、全スタッフで対応するようになってきている。前日には全員が現場に集合し、担当者からその家の設計趣旨やその元となる施主の思いを学ぶ。見学会当日は、来場者をあえて自由に歩かせたりせず、その家に込められた願いや思いがよく伝わるような順路に誘導し、一つひとつ丁寧に説明していく。いわゆる家と人の「ストーリー」をしっかり伝えていくことに、力を注ぐことにしたのである。

付きっきりで案内されることを敬遠する人もいるだろう。が、真剣に家づくりを考えている人ほど、いわゆる“営業モード”の案内ではないことに気付き、納得して案内を受けるようになった。「自由に見学してもらうだけでは、どうしても伝わらないことがあります。住宅の見学会は『感じること』と『説明を受けて納得すること』の二つの要素が必要。その2種類の刺激を上手に伝えることができて初めて、短い時間でも訪れたお客様の記憶に残っていく家になるのだと思います」(橋本)。

 
  

ずっといたい場所──のためにできること。

  

ユーザーのニーズは千差万別。
家族ごとの願いや思いに寄り添いながら、
それぞれの「ずっといたい場所」をつくっていく。

1988年の創業当初から、女性が多い職場である。社員21名中女性が6名。さらにそのうちの3名は子育て中であり、同時に介護が必要な家族を抱えているスタッフもいる。背中に子どもをおんぶして通ってきた社員もいれば、保育園から社に連れて帰る社員もいる。橋本曰く「休まれて業務が滞るより、ずっといい」のである。

2001年から毎月開催している「家づくり教室」も子連れ大歓迎。乳幼児期のお子さんが、講義途中で泣き出す場合もある。そんな時は、お母さんがそっと席を外し、子どもが泣きやむとまた静かに戻ってくる。就園前後の子どもたちは社内に設けられたキッズコーナーで遊んで待つことも多い。教室の開催日には女性スタッフで、子どもたちのお世話係を分担する。経験者が多いだけに、いかに子どもを連れて出歩くことが大変か、痛いほどわかる。

男性は家を建てることそのものが目的になりやすく、建てたら後はお任せとなるケースが多い──とは、自戒を含む橋本の実感だ。「イメージを楽しむ力は圧倒的に女性の方がある。男性は良くも悪くも目的型。打ち合わせに際しても『本日の打ち合わせ事項』から外れることはなかなかありません。一方、女性との打ち合わせは中身がどんどん派生していく。非効率のようでいて、時に思いもよらないアイデアが生まれたりします」(橋本)。

常に最新の技術や知識に貪欲で、変化することを恐れない橋本だが、変わらない思いがある。目に見えない性能、目に映る佇まい、男も女も、子どももお年寄りも、そしてもちろん、家族全員すべてひっくるめて、「ずっといたい場所」。(文中敬称略)

 

■──編集後記
欧米の最先端の住宅情報やノウハウ、デザインを貪欲に採り入れ、スマートな意匠やインテリアコーディネートで魅せてくれる一方、地中熱ヒートポンプを使った冷暖房システムを国内でもいち早く採用し、無暖房住宅を標準化させるなど、住宅の性能や設備システムまでも絶えず進化させてきた。また、室内の空気質や建材、水、電磁波までも測定して数値化・分析することにも、継続的に取り組み続けている。
社長の橋本は、岩手県川井村出身。自身のブログでは方言も飛び出し、いわゆる「西洋かぶれ」とはほど遠い、生粋の岩手人。ハードとソフト。洗練と素朴。それら相反する要素をバランスよく持ちながら、偏らない幅の広さ・深さ・柔軟さが、この人の魅力でもある。同社で手掛けるおしゃれな輸入住宅の印象よりも、親しみやすく温かいものを滲ませているのは、会って初めてわかることかもしれない。
2階事務所にも社長のデスクはあるが、実は、社屋の3階に瞑想部屋ともいうべき隠れ室がある。大きなテーブルにあれこれ書類を広げ、ああでもない、こうでもないと考える。ブログもここでしか書けない。社員を入れることもほとんどなく、今回もカメラが入ることは許されなかった。
絶えず、これでいいのか…と自分の価値観を検証し続けるのは、辛辣な作業に違いない。家族を持つ大勢のスタッフを抱え、一緒に夢を形にしてきた多くの施主を抱える「社長」ゆえの孤独でもある。施主に対して徹底して家づくりを楽しんでもらおうとする努力もエネルギーが必要だ。悩むことから決して逃げない橋本が見守る家は、美しさのなかにも強靱な芯を持つ「普遍の家」でもある。(文中敬称略)

キッチン回りも既製品に安易に頼らず、パーツ選びから施主と楽しむ。(滝沢村T邸)。

橋本社長を囲んで。いつも柔らかい笑顔にあふれている職場。

空間に鋭角な角を残さない。高い施工技術に裏付けられたディテールの美しさが光る(矢巾町A邸)。

壁の表情を変えるニッチ。壁の色や素材、灯りとのバランスも計算し尽されている(滝沢村N邸)。

水栓金具やボウル、タイル、鏡など、洗面台も同社オリジナル施工がほとんど(矢巾町A邸)。

個性豊かなガレージを持つプラン実績が多いのも同社ならでは(滝沢村S邸)。

DATA
工法 北米型2×4工法(木造・外断熱)
平均隙間相当面積 0.3cm2/m2
平均熱損失係数 1.0W/m2・K
社名・連絡先 株式会社 大共ホーム
岩手県岩手郡滝沢村鵜飼字下高柳11-1 TEL 019-687-1541 
http://www.daikyo-home.jp/  E-mail
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