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■井上棟梁の仕事をじっと見つめる田村社長。
井上棟梁は2級建築士でもある。 現場の理解が早く、打ち合わせもほとんどしない。
現場の棟梁で建築士の資格を持つ人がいるのは心強い。 |
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晩秋の昼下がり。カンカンカンとトンカチの音が響く現場に、社長の田村栄耕の姿があった。ズボンのポケットに手をいれ、無言のまま、井上清充棟梁の仕事をじっと見守っている。井上棟梁もまた、黙々と手を動かすのみ。しばらくすると、田村は静かにそこを離れ、ぐるっと現場を一回りし、帰途につく。
靴にはいつも泥がついている。それだけ、現場を歩いている証拠である。田村の元に16歳で見習いに入って30年以上が過ぎ、田村流の家づくりを会得している井上棟梁の現場はさておき、他の現場も、1日1度以上は見て回る。そんな田村の目が行き渡る現場には、いい緊張感が漂う。しかしそこでも、大工たちに声をかけることはめったにない。
「うちは会話のない会社だから」。田村は笑う。ミーティングはなし。裏返せば、そんな必要がないほど「一を聞いて十を知る」関係がそこにある。社員は5名。応援を頼む社外の大工を含めて、皆、20年、30年のキャリアを持つベテラン揃いだ。なかには田村が文字通り「同じ釜の飯」で育てた者もいる。
安心して任せておけるにもかかわらず、現場歩きを日課にしているのは、1軒ごとの進行状況を把握するため。施主からの問い合わせに、いつでも自信を持って答えるためでもある。しかし、実のところ、誰よりも現場が好きなのだ。
西根町の大農家に生まれ、16歳で建築の世界へ。修業時代を経て、1975年、28歳で盛岡で独立創業し、7年後の82年に法人化した。田村が興した伸栄建設は、盛岡に根差し、一貫して木をふんだんに使った在来構法の家づくりに取り組み続けている。
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