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vol.4

コストダウンと高性能── 相反するテーマをクリアした完全6面体キューブ構造。

株式会社 サンウッド盛岡支店 【岩手県盛岡市】

温熱環境の改善までアプローチした「住宅再生」

オール電化で全館暖房。
浴室や脱衣場も快適温度となる電化リノベーション
(岩手県宮古市N邸)。
躯体を残して解体。構造をチェックし、
腐朽した構造材は全て取り換えるのが大前提。

「リフォーム」と「リノベーション」は似て非なるものである。リフォームが一般に部分的な改修や営繕的な工事を指すのに対し、リノベーションは「住宅再生」と位置づけられ、耐震性や防火・安全性を確保しながら耐久性を向上。冷暖房に費やすエネルギー節減までを視野に入れた建築機能の向上をめざす。

数十万、数百万円単位のリフォーム工事を繰り返すことで、結果として新築並の費用をかけてしまうケースは珍しくない。が、同社の「リノベーション」は、外壁を外して構造躯体のチェックをし、使用できる部材は再利用しながら、建物の安全性・省エネ性能を国の次世代省エネ基準レベルにまで向上させる。その意味では、これまでリフォーム工事に多く見られた費用の損失を回避する「リスクヘッジ」の側面もあり、建物の機能・性能を向上させることで資産価値を高めることができる。

構造補強だけに主眼を置いたリノベーションも少なくないが「電化リノベーション」では文字通り、温熱・空気環境のバリア解消を基本とし、オール電化の実現が前提。温熱・空気環境の改善なしでは結露やカビの問題は解決されず、内装だけでなく構造体の腐朽を促進させるだけのリフォームになりかねないからだ。いわば、表面上の「化粧直し」としてのリフォームとは明確な一線を画しつつ、耐震補強や耐久性の向上、そして「断熱」「気密」「換気」「暖房」についての十分な認識をベースとした思想と技術がそこにある。

細部の傷み・腐れも見逃さず徹底した断熱・気密施工

間仕切りを全て取り払い、
家族がいつでも気軽に集えるオープンなリビングとした。
この物件は、平成17年度いわて省エネ・新エネ住宅大賞
「リフォーム部門」大賞を受賞(岩手県宮古市N邸)。

リノベーションの工事は、できる限り躯体を残しての解体準備・足場工事を経て、現状の気密測定からスタート。実際には、隙間が多すぎて測定不能の住宅が少なくない。構造をチェックし、全体をスケルトン(骨組状態)にして腐朽した構造材を全て取り換える。従来の床下のほとんどは土のまま。防湿対策がなされていないため、大抵は土台も腐っており、カビ臭が鼻につくこともある。水回りの周辺も床下、壁ともに腐朽がひどいケースがほとんどだ。

腐った土台や柱は乾燥材に交換。主要な構造材には、反りや曲がり、狂いが少ない集成材を採用。外壁にはOSB合板を貼り、筋交いや柱を金物で補強する。OSB合板を貼ることで強度は筋交いの1.25倍にもなる。土間整地のあとで防湿シートを貼り、土間コンクリート打ち込み。基礎には断熱材を敷設し、外周部には硬質発泡ウレタンを貼り付ける。屋根や床下など建物全体も断熱材(硬質ウレタンボード)で包み込み(外断熱)、新築同様の断熱性を確保する。内装工事に入る前に、1回目の気密測定を実施。隙間相当面積は0.5㎠/㎡以下(次世代省エネルギー基準Ⅰ地域=北海道レベル)をめざす。外壁には通気胴縁を施工して外壁を取り付け、いよいよ最終工程。2回目の気密測定を実施し、全体の検査をした上で引き渡し…というスケジュールとなる。

温熱環境を一新することで家族の体調が改善していった

壁を剥がしてみると、
構造材や断熱材が水分を含んで
黒く変色しているケースが多い。

電化リノベーションで生まれ変わる前の岩手県花巻市のA邸は、築27年の木造住宅。建て替えも検討したが、盛岡市のリフォームフェアで電化リノベーションのことを知り「新築より割安で、温熱環境にまで配慮されている」ことを理由に、迷わず選択した。80代のご両親との同居、ご主人の膝痛もあって、「オール電化で全館暖房の快適な家」への期待は膨らんだ。

1階は両親の寝室を和室から洋室に変え、念願だった専用トイレを設置。玄関ホールから全て段差を無くし、出入り口も引き戸。元の食堂部分に6畳の寝室を新たに設け、居間にあった6畳の小上がりをなくし、キッチンからダイニング、リビングと合わせて24畳のワンフロアとした。2階はもともとあった和室と洋室にそれぞれクローゼットを備え、玄関ホールの吹き抜けに床を張って多目的ホールに。旧宅での電気、ガス、灯油代の合計は42万4279円(2006年)。入居後まだ間もないため実データは出ていないが、Q値・C値からシミュレーションした結果、40%以上の削減が可能となる。いうまでもなく全館暖房、給湯、調理、照明など全て含む。

以前の家では、浴室や洗面を億劫がっていた高齢のご両親も、お風呂が楽しみになった。冷え性だった奥様も、いまは「布団から足首を出し、両手をあげて寝る」。ご主人の膝痛も回復。寒さというバリアから解放され、のびやかに暮らす5人家族。電化リノベーションの性能と健康との関わりを示唆する事例である。

温故知新をコンセプトに風土に合ったリノベーションを

床下からの湿気を抑えるため、
土間整地をしたあと防湿シートを貼り、土間コンクリートを打ち込む。
床を支える束も新しいものに交換。



同県宮古市のNさんは「家族の思い出が染み込んだ家を全壊するには惜しかった」と振り返る。土台や柱にはクリなど、いまでは入手が難しい良材が使用され、その再利用を望んでいた。「数値に裏付けされた高断熱・高気密、計画換気が、新築同様に可能なこと。オール電化にしても建て替えよりは、工事費・経費の低減が図られること」から電化リノベーションを選んだという。

暖房・調理・給湯などの熱源を電気で一本化することで、快適性・利便性・安全性・経済性といった、住宅に求められる条件を一度にクリアできるのが魅力。暖房・換気設備には、ドイツ・スティーベル社製の空気熱源ヒートポンプ式温水暖房システムと、顕熱式熱交換換気システムを採用。64坪で年間の電気料は約20万円。全館暖房、24時間計画換気、給湯、照明等の電気料金を含んだコストである。

豊富な日射量を考慮して大きな開口部をとりながら、蓄熱を兼ねた広い土間を設けるなど、パッシブ手法とこの地の風土性を生かしたデザインを両立。Q値は1.05W/㎡・K。平成17年度いわて省エネ・新エネ住宅大賞「リフォーム部門」大賞を受賞した。

解体時の廃材も新築と比べ約4割減のエコロジー性

壁を解体してスケルトン(骨組状態)にすることで
構造チェック、耐震補強をする。
腐食した柱や梁は乾燥材に交換。
主要な構造材には、反りや曲がり、くるいが少なく、
引っ張り強度、圧縮強度の高い集成材を採用する。

電化リノベーションは、新築よりはるかに手間がかかる。工事途中にも予期せぬことが頻繁に起き、修正のための打ち合わせや作業が増え、施主と施工者双方にロスタイムも出る。新築は、いったん計画を立てると計画通りに進んでいくが、リノベーションでは修正作業と確認作業の連続だ。

古民家など、古い建物では基礎すらない場合も多い。その際は、建物をジャッキアップして強固な基礎を造る。1階の高さを確保するため床を下げ、2階の天井が低いので桁を上げる──など、新築にはない苦労が常に付いて回る。壁を解体してスケルトンにし、廃棄する材料と再利用できる材料を緻密に分別することで、建て替えと比較すると廃材はおよそ4割減。その分、環境への負荷も低減できるという意味では、省エネ性能の向上と相まって、エコロジカルな建築手法といえる。開口部は、標準仕様で樹脂サッシ・アルゴンガス充填・Low-E。使用される硬質ウレタンボードは、グラスウールの2倍の性能を有し、壁50ミリ、屋根100ミリの外断熱。C値・Q値ともに、国の次世代省エネ基準・北海道レベルをクリアする。「新築同様」ではなく「次世代基準の新築同様」といったほうが正確だ。

新築ではなく基本的にリフォーム扱いのため、取得税などの諸経費も軽減される。新築時と比較し、諸費用が200万円前後割安になるメリットも大きい。

■──編集後記
リフォーム需要が高まっている。その単価は、数万円単位から数百万円までと幅広い。しかし、高いコストをかけても過酷な暑さや寒さのなかで、高いランニングコストを支払いながら住み続ける家族は少なくない。「化粧直し」に過ぎないリフォームを繰り返した結果、最後はやはり建て替え…という図式だ。
新築コストと、いくつものリフォーム工事を合計すると、建て替え以上の金額になっているケースが圧倒的に多いのである。「新築同様のリフォーム」を看板に掲げるリフォーム企業は数あるが、断熱・気密性にまで言及し、C値・Q値の数値的裏付けを示す企業はほとんどなかった。断熱・気密性には中間はなく、特に気密性に関しては、高気密か気密化しないかのどちらかでしかない。半端な気密工事は結露被害や換気弊害など、別の障害を誘因するケースの多いことに、住宅のプロが気づいていないのだ。
同社は新築のオール電化住宅でも実績を積んできたが、2004年からは東北電力100%出資の(株)エルクと共同で「電化リノベーション」を全面に打ち出し、高断熱・高気密を前提としたオール電化仕様のリノベーションに取り組んでいる。07年3月時点の実績は岩手県内で20棟以上。リノベーションとはいえ、Q値1.0前後の高い性能を発揮する物件もあり、その高度な技術力に驚かされる。温熱環境のノウハウを熟知した専門家集団だからこそ具現できる技術である。
とはいえ「電化リノベーション」は安くはない。換言すれば「電化リノベーション」が高いのではなく、旧態依然の低レベル性能の「新築」あるいは「リフォーム」コストが、いまだ高いともいえる。営業費やフランチャイズ加盟へのコストを建築コストにまで反映した企画住宅と、一つひとつ異なる仕様の既存住宅をリノベーションに導くその膨大な時間と作業をコストに換算するとわかりやすい。国の次世代省エネ基準クリアとオール電化を前提とするコンセプトは明快。新築でもリフォームでもない、「電化リノベーション」という新たな選択肢の登場を歓迎したい。

外壁にはOSB合板を貼り、筋交いや柱を金物で補強。断熱材(硬質ウレタンボード)を外張りした高断熱・高気密施工。

中央が我満嘉晴支店長。右が技術係長の川又昭人さん。左がスタッフの南雲静江さん。いつも笑顔の絶えない職場である。

旧宅は個室が並んでいた2階もオープンスペースをとって広々とした空間に(岩手県花巻市A邸)。

06年12月に完成したばかりの岩手県花巻市A邸。暖かな空間で過ごすようになって、ご主人の膝痛がほとんど解消したという。

バリアフリー工事も同時にできるのがリノベーションのメリット。トイレも引き戸として広さを確保(岩手県宮古市N邸)。

この地方特有の広い土間を玄関脇に設けた。開放感だけでなく、ちょっとした作業場ともなる(岩手県宮古市N邸)。

DATA
工法 電化リノベーション
平均隙間相当面積 0.5cm2/m2以下
平均熱損失係数 1.50W/m2・K以下
社名・連絡先 株式会社 サンウッド盛岡支店
岩手県盛岡市西仙北1−31−34 TEL 019-631-3055 FAX 019-631-3056
http://www.sunwood-net.co.jp/  E-mail
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